接 触 回 避









『コンナ事デモ感ジルノカ』

その疑問形の一言に、制御の効かない屈辱感が炙られた
噛み切りそうな勢いで

≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


その人物は、異動という建前で飛ばされて来ました。西方軍に。
着任早々から、何かと目立っていましたね。
噂の真偽を半分以下に聞いても

―――捲簾大将という、彼は

長身で、黒のイメージ。
いつも笑っている、印象。
人当たりは、良好。
但し、本心からとは疑問。
思考回路は単純なのに、肝心な所は読み取り難い…のでは?

これが、ざっとした僕の捲簾に対する評価でした。
大将として使えれば、別にどうであっても構わない事でしたけどね。


けど…今…僕の自室の書庫で、手首を一纏めに掴まれ。
思い切り、顔を近付けられ、視線をぶつけ合っていると。
今のでの判断基準に狂いが、あったのかと。
自分に歯軋りしたくなります。

どうして、この僕が捲簾に、こんな事をされるのか…。
ギリッと沸き上がる怒りを抑え、冷静さを手繰り寄せました。

「放しなさい。」
「断る。」
「命令ですよ。」
「却下。」

埒の無い会話は、冷静を奪われかねない危険性があるので。
僕は一旦、口を閉ざしました。
一体、何を考えているのか、この男は。
そう、不思議で仕方ありません。
根本が判らなければ、解決もへったくれもありません。
この状況は、僕にとって不利です。あまりにも。

「貴方は。」
「何だ?」
「一体、何をしたいのですか、捲簾大将。」

努めて、硬質な声色で捲簾に告げると。
水を向けられる事を待っていたかの様に、捲簾はニヤリと笑いました。
失敗した――と、僕は即座に思いました。

「お前を抱くんだよ、天蓬元帥。」

僕の頭の中に、その言葉の意味が届こうが届くまいが、お構いなしに。
僕の首にあったネクタイが、スルリと捲簾の手で抜かれていきました。


≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


手は邪魔だというばかりに、一纏めに縛られ。
完全に、動きを封じられてしまいました。
抵抗は勿論したのですが、慣れ過ぎていると思う位。
捲簾の手際は良く、僕の躰を物の様に扱い、準備を整えてしまいました。

足は膝をベルトで一括りにされ、横倒しに芋虫の様に床に転がされました。
埃臭さに、思わず咳き込むと。

「大丈夫か?」
「…大丈夫に見えますか?」
「イイ眸、するよな。お前は本当に。」
「何を言って…。」

関連性の見えない会話をされ、僕は呆気に取られました。

「その眸を、な。」

捲簾の指に、顔から眼鏡が外されました。

「見てると、な。」

今度は、顎を取られ持ち上げられました。

「シてみたくなるのさ、色々と、な。」

近付いてきた捲簾の舌に、眼球をペロリと舐められました。
全身が…背中が、総毛立ちました。
気色悪さより、悪寒が走りました。
捲簾が晒してくる固執に、口に出せない恐怖を感じてしまいました。

さらさら、と下へ流れていく砂の様に。
いつの間にか、抜け出せなくなるのでは無いか―――と、いう恐怖に。

「大人しくはしろよ。無駄な怪我はさせたくないからな。」
「…勝手な、事を。」
「気を遣ってやってるんだろ。」
「余計な事、です。」

捲簾の言葉に、僕は一々カンに触るというのに。
捲簾は逆に、僕の言葉を楽しんでいました。

むかつきました。もうここまでくれば、何をされるのか判ります。
この状態では、逃げられないし。
捲簾はスルまで、僕を解放しないでしょうし。
だったら…僕は、僕に出来る事で自分を守る事にしました………。


≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


喋らなくなった。瞼を閉じた。
顔を背け、躰が動かない分、天蓬は意識から俺を追い出していた。

完全なる拒絶。その隙のなさは称賛に値する。
それから、感謝ともな。
俺を愉しませてくれる事に気付いていない事にも、な。
抵抗をしない躰は面白くないが、それを引き擦り出すのは面白いって、事だ。
俺が、な。

人ってのは、痛みを嫌うが耐久性はある。
却って、耐える事に依って尊厳を守り易い。
つまり、逆を言うと快楽には弱いって事だ。
気持ち良い事は、受け入れやすいってな。
どんなに中身が意地を張ろうとも、器は簡単に取り込もうとする。

自分に裏切られる瞬間を教えてやるよ。
その時は、どんな顔をするんだ?
見せて貰うぞ、天蓬。


≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


縛られている手足が、痺れてきて。
段々と、感覚がなくなってきていました。
血の流れが塞き止められていて、鈍痛がしてきました。
けれど、それを捲簾の前に晒したくはありません。
僕は感情の揺れを全て抑え込んでいました。

「判っていないな、お前は。」

急に床の上から抱き起こされ、唯一閉じる事の出来ない耳の中に。
直接、声を吹き込まれました。
息がくすぐったいのと、ねっとりした声の響きに。
思わず、反論しようとしましたが。
寸での所で、抑え切りました。
決して、捲簾の思う通りにはなりません。
勝手に喋っていればいいんです。返事はしませんから。

「ま、いい。無駄な抵抗をしていろ。俺の為にな。」


≪ ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ≫


天蓬のYシャツの前を、ボタンを無視して開かせた。
白いと、思っていたがその通りだった。
服の中にある肌は、女の様に白かった。
ただ、柔らかさはなかった。

これから、される事に強張り、拒否し、抵抗している躰だった。
この躰の中に入っている、天蓬という個に、俺は執着している。

暴きたい。余す事なく、俺の前に晒させ。
動けなくしてやりたい欲が、沸々とわき起こる。

固く瞑る眸。噛み締め過ぎの唇。
それらを凝視しながら、俺は天蓬の躰へと触り始めた。
爪で掻いたら、簡単に破けるんじゃないかと思う、薄い皮膚。
骨の形が浮き出ている鎖骨と胸。
細工飾りの様に、脆そうだ。
腹は凹んでいるが、抑え込んでいる呼吸で小さく上下している。
両方の、脇腹を撫で下ろし、そのまま。
ベルトを外し、弛めてあるズボンの中に滑り込ませ、脇から後ろ。
尻の肉をぐいっと、鷲掴みしてやった。

飲み込んだ悲鳴の代わりに開けられた、天蓬の眸と合った。
何が、一番の深い色だ?
屈辱、羞恥、憎悪…混ざり合い、混乱しているのが。
何て、強情が似合う事か。

一旦、天蓬の躰から手を引き、胡座を掻いた俺の膝の上に。
くの字の形に曲げた、天蓬を乗せ上げた。
俺へと尻を突き出している恰好に、天蓬は不自由でも逃げようと。
精一杯に暴れてくる。
抑え込む手から、天蓬の拒絶が伝わってきて愉しめる。
本意でないと藻掻く様は。

時間を掛け、隈無く愛撫してやった。
悦を知らない躰は、少しずつ慣れ、反応し出す。
熱を持ち始めた天蓬の喉が、唾を飲み込み。
小さく息を吐いたのを見逃さず、俺は屈み込み、言ってやった。

「こんな事、でも、感じるのか。」

屈辱に火の点いた躰が、暴れ出す。
それを両腕で、態と優しく抱き留め、もう一度囁いてやった。
俺が愉しむ為に。

――― 感じればいいさ、好きなだけ
            俺が見ててやるから ―――



2007.8.24 西国 遙か様




先だってチャットで遊んで頂いた際に、セリフひとつから捲簾鬼畜を生み出し、夏休みの宿題として提出下さるというお話を戴きました。何という光栄!何という幸運!!そうしてお忙しい最中にも関わらず、こんなにも素晴らしい鬼畜捲簾を賜りました、有難う御座います、鬼畜捲簾が格好良い…素敵過ぎて涙が止まりません……(号泣)
遙か様は何点頂けるでしょうか、とのお話でしたが、点数という概念は明らかにぶっちぎった満点、100パーセントの至宝で御座います!!!
弟子にして下さい!遙か師匠!!

この度は本当に本当に有難う御座いました!!!私も必ずや冬休み前には夏休みの宿題を仕上げて提出に伺います!!!(土下座)






CLOSE




inserted by FC2 system