落  陽






僕に取って他人との関係は
部下だとか上司だとかは殆ど気になりません
仕事をきちんとしてくれさえすれば
別に誰だって良いのです 本当に

††††† ††††† †††††


ライン引き等、どうでも良いとしていたのが。
この男に関しては、間違えでした。

大将でありながら、上司という肩書きを持つ男は。
机の向こう側、椅子に座りながら、僕を見上げてきました。
口元を引き締めながら。

話があると呼び出され、読めとばかりに。
パサッと投げて寄越された報告書らしき物に。
僕は取り敢えず、目を通しました。

「―――でっち上げですね」
「その根拠は?」
「余りにも、馬鹿馬鹿しいからです」
「何故、そう思う?」
「根拠がありませんから」
「成る程」

そう言って笑う、男――捲簾の目は、一旦閉じられ。
何かを隠す様でした。
空気が捲簾の思惑を吸い込む様に、重さを増した気がしました。

「では、ご納得頂けた様なので」
「―――納得、ね」
「これで、失礼致します」

捲簾の次の言葉を聞く前に、僕はおざなりの一礼をして。
その場から、退室しました。


††††† ††††† †††††


清廉潔白な人生を送ってきた訳では、ありませんが。
それでも、むかっ腹を立てながら。
僕は廊下を歩いていました。

上司にも、報告書の内容にも。
色々と、中傷されるのには慣れていたつもりですが。
一体、どこからあんなネタを仕込んできたのか。
むかつきます、心底。

報告書に記載されていた『西方軍、天蓬元帥に関する薬物の常用』って。
何ですか、あれは。
言葉のセンスもへったくれもない。

捲簾の手前、一笑に付してきましたが。
ふと、誰が何の為に――という疑問が思い浮かびました。
この事で、利益を得る者。
それは、一体誰なのか。

僕の失脚を願うなら、見当違いの所を突いていますし。
…だったら、狙いは?
…僕の、動揺?

……………。

僕は踵を返し、今歩いて来た道を大急ぎで逆戻りしました。


††††† ††††† †††††


「捲簾っ」
「何だ、自白しに来たのか」
「誰がっ」

上がってしまった息を整え、捲簾へと近付き。
執務机に、バンッと大きな音を立てて、両手をつきました。

「いい加減にしましょう」
「何を、だ?」
「酔狂をです。貴方が何を意図しているのか等、知りたくもありませんが。
 それが、僕に害を及ぼすものであれば、排除しますので。
 それをご忠告申し上げるだけです」
「………」

一気に、介入を許さずで、告げ終えた時。
捲簾の眉がピクリと動いたのを、僕は見逃しませんでした。
仕組まれた事に、僕が付き合う必要等全くありません。

「では、これで失礼致します」

今度は、後ろを振り返らず、頭も下げず。
僕は部屋を出ようと、ドアノブに手を掛けました。
その直後、首の後ろに鋭い痛みを感じ。
ドアに手を付けながら、身体がズルズルと床へと沈んでいくのを最後に。
僕は、強制的に意識を失いました。

―――捲簾が、何かを言ったのを聞き取れずに。


††††† ††††† †††††


「取り調べが済んでない、ってな」

完全に、俺の足元に崩れ落ちた天蓬の両手首を。
後ろ手に、きっちりと縛ってから床から拾い上げた。
力を失っている身体は、重くだらしなかった。

ベタな策だったが、案外こういったモノの方が。
余計な警戒心を起こさせず、引っ掛かるもんだな。
頭でっかちの此奴には、逆に。

無機質で、冷淡な眸は閉じられ。
何時もは、一文字に閉じられている口が浅い息をする為に。
うっすらと、開かれている。

最高の人形師に依って、腕を振るわれた細工人形の様な。
怜悧な容貌は、俺の嗜虐を誘った。

ねじ伏せてみたい、と。
力のみで奪った時に、どんな表情をとるのか。
見てやりたいと、思った。
だから、こうして実行に移してみたのだが。

     †††††

執務机の上に、腰までを乗せ、足だけが垂れる様に。
その身体を乱雑に、置く。
ネクタイを抜き取り、白衣の下のYシャツのボタンを。
全部外し、開く。

便所ゲタは、もうとっくにその辺に転がっていたので。
ベルトを緩め、ズボンも脱がし、同じその辺に投げた。

眼鏡を外してやりながら、のし掛かり、キスをする。
反応が無いうちに、口腔を舌で好き勝手に探った。
そのうち、濡れた音が立ち始めると。
天蓬から、息苦しくも鼻に掛かった、息が洩れだした。

キスを一旦止め、見下ろすと、まだ目覚めないが。
忙しなく呼吸し、口の端から唾液を垂らしていた。
それを舐めとり、呼吸を整わせず、深くキスを仕掛けた。

ゆっくりと、反応が返ってくる。
沈んでいたモノが、浮上してきたのを確認し。
俺は絡めていた舌を解放し、天蓬のネクタイを猿轡の代わりに口に噛ませた。

肩が揺れ、頭が動き、天蓬の眸が開き始めた。
焦点が結ばれていく前の、無防備な顔を眺めながら。
俺は天蓬の肌の上に、掌を滑らせた。
肉質はないが、滑らかさがある身体は触り心地が良かった。
呼吸し、上下している胸を撫でているうちに勃った乳首を抓んで、捩った。

「………っ!」

天蓬の口から、音にならない悲鳴が上がった。

「取り調べ中だ、大人しくしていろ」

耳へと囁くと、天蓬の身体が俺の下で藻掻き始めた。
本人は力の限りだろうが、机と俺の身体に挟まれ。
自身の腕を自重で押さえられる形になっている為、大した抵抗にはならない。
不自由な体勢に、痛みを覚えるだけだろう。

天蓬が俺に何をされているか判るよう、殊更ゆっくりと探る。
合わせている肌から、嫌悪感が伝わってくるのを無視し。
快感を与えてやろうと、天蓬のモノを握り込んだ。

拒否の悲鳴が、又もや上がるのを愉しみながら。
やわやわと扱いてやると、素直に勃ち始めた。
そんな天蓬の顔を見ると、それは悔しそうな顔で睨んでくる。
俺は、それに笑い返した。

「気持ち良さそうだな」

天蓬の先走りでベタついた手を、天蓬の前に差し出すと。
瞬時に、真っ赤になる顔。
屈辱と羞恥に包まれて。
それが何とも言えない、快感になって俺に返ってくる。

天蓬の意志など必要ない程、俺は此奴を欲している。
足の付け根を押さえ、左右に広げる。
ずり上がって逃げようとしているが、当然無駄だった。

全身の痛みを耐える天蓬を。
俺は貫き、犯す。
ある種の高揚感に、満たされるように支配されながら。


††††† ††††† †††††


一体、何処が、どう痛いのかも判らなくなる程。
歯を食いしばる様な、衝撃の中。
僕は勝手に、捲簾の熱さを押し付けられて、気が狂いそうでした。
あまりの悔しさに。

油が切れた機械の様に、嫌な音を立てて軋み。
今にも壊されそうな恐怖が、頭を掠めましたが。
精神が捲簾を拒否する事で、対抗しました。

許さない
許さない
許さない

僕を勝手に蹂躙するなど、絶対に許さない。


††††† ††††† †††††


挿れた儘で、長い時間を犯した。
天蓬の中が柔らかくなるまで、根気良くな。
挿入時に萎えてしまった天蓬のモノを密着した腹で。
何度も、可愛がって擦ってやると回復も、し始めた。

繋がっている下半身から、熱が噴き出してくるのに。
もう、時間はいらなかった。

塞がれた口から、こごもった声を上げる天蓬を。
俺は腕の中に抱き込み、眸を合わせた。
強い憎しみの生まれた、その眸にぞくりとした。
判り合うつもりは、ない。
この繋がりを解く気も、ない。

俺は、俺から逃げようと足掻く天蓬を容赦なく突き上げると。
同時に、裡も互いの腹の間も、ドロリとしたモノに濡れた。
そして、糸が切れた様に力が抜けた天蓬に。
熱く、絶望を囁いてやった。

天蓬が、それをどう取ろうと構わずに。
冷えていく身体を抱き締めた儘に。



2007.10.28 西国 遙か様



遙かさんとは何時も鬼畜捲簾談義をさせて戴くのですが、今回の深夜デートでは合い言葉が『腹筋』と相成り…
萌え所が多すぎて、最早何処から萌えたら良いのか分かりません、先生!!
精神的、肉体的に追い詰める捲簾の格好良さにメロメロです…!!!これぞ真の鬼畜道というものだと、改めて鬼畜捲簾熱が高まりました!!遙か先生、本当に本当に何時も遊んで下さって有難う御座いますv v v これからも宜しくお願い致します!!






CLOSE




inserted by FC2 system